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「アウト・オブ・サイト」無能という主題 [メディアから]

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アウト・オブ・サイト (ユニバーサル・セレクション2008年第4弾) 【初回生産限定】

アウト・オブ・サイト (ユニバーサル・セレクション2008年第4弾) 【初回生産限定】

  • 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • メディア: DVD



DVDで「アウト・オブ・サイト」という映画を観た。
1998年公開、主演はジェニファー・ロペス、ジョージ・クルーニー。監督はソダーバーグである。
今頃になってこの映画を見たのは、劇中に、今話題になっている大変美しい銃が出てくるからである。

スイスのシグ・アームス社の230pというモデルで、日本でもSP(要人ガードの部隊)に配備
されている。武器の美というのは、デザインとして興味深いものがある。

http://mgdb.himitsukichi.com/pukiwiki/?%A5%B7%A5%B0%A5%B6%A5%A6%A5%A2%A1%BC%20P230

従って劇そのものに期待していた訳ではないが、なかなか良くできていた。

複数の過去へのフラッシュバックがあちこちに挿入されている複雑なプロットの構成にもかかわらず、
物語が混乱していない手際はさすがであると思った。例えば二つの刑務所が近い過去と2年前に
遡って回想されるのであるが、囚人服を片方は黄色、片方は青で統一しているため分かりやすい。
一つの場面が終わって次に移るのでなく、複数の回想が代わる代わる立ち現れてくる様が大変美しい。

この映画は「スタイリッシュ」と形容される向きもあるようだが、むしろコメディーに近い。
しかし単純な「かっこよさ」でも「笑い」でもなく意地の悪い嘲弄でもない。
随所に出てくる登場人物の「ずっこけ」は原作の思想でもあるのだが、「非常に有能な人間でも
思いもかけぬ愚行を冒すのが通例である」という人間観を語っているようである。

例えば主人公は200もの銀行強盗を武器も使わず口先三寸で実行して来た頭脳犯で、冒頭で
銀行員を欺いて見事に金をせしめるのだが、逃走用の車のエンジンがかからずあっけなく逮捕される。

ヒロインもまた非常に有能な連邦保安官なのだが、偶然居合わせた脱獄の現場でショットガンを構えて
いたにもかかわらず、素手の二人組に無様に拉致されてしまう。

つまり失策が物語の始まりとなっている。

また劇中に出てくる凶悪犯たちも自ら招いたエラーで自滅する。つまり人間の本質は無能であり、
その無能さがチャーミングであると暗に示しているように思われる。

ラストの場面、強盗に入った彼は逃走する機を逸して銃を持って彼女と対面する。
彼等は愛し合っており、女を撃つ気がなく刑務所に戻りたくもない彼は、彼女に
射殺される事を望んでいる。

それを知っているヒロインは、しかし射殺できず足を撃って彼を逮捕する。
その刹那の二人の会話が面白い。銃を構えあって互いに牽制するのだが、女の方は

「負けたわ」    ( You win,Jack. ) と言って男の足を撃つ。そして 倒れた彼に駆け寄り
「撃てなかった。」 ( I can't shoot you. ) とつぶやく。撃たれた男は
「ちゃんと撃てた。」( You did. You shot me. )と答える。女は
「言わないで。」  ( You know what I mean. )と答える。

なぜ女は撃つ刹那に「負けたわ」(あんたの勝ちよ、ジャック)と言ったのか。
単純に言えば「撃ちたくなかった」、ということであるが

向き合った時、男は「撃たれてやりたい」という気持ちであった。女はできれば彼を逃がしたい。
つまりここでは「撃たれた方が勝ち」という愛の駆け引きとなっているのである。

結果、職務を遂行する意志がある彼女の方は彼を撃たざるを得ない。
だから愛の駆け引きとしては、「負けた」と言ったのであろう。

そして女は彼からの反撃がない事を察知して、致命傷にならないように,
「照準を外して」(タイトルの通り ”out of sight”して ) 彼の足を撃つ。

見事に撃ったにもかかわらずなぜ、「撃てなかった」とつぶやいたか。

彼女は「彼が彼女に射殺される事を望んでいる」と察していたのだが、それができなかった。
致命傷を与える事を避けたため「あなたに屈辱を与えたのではないか」と言っているのである。

彼はYou did. You shot me.と答える。これはどういう意味か。事実を言っただけだろうか。
敵対関係ならこれは「よくも撃ちやがったな。」という事になるが、もちろんそうではない。

日本語字幕で「ちゃんと撃てた。」とあるように「君は職務をちゃんと遂行した。」と言っている。
(しかし深読みすると、「君は俺のハートを射抜いた。」ともとれる。)

彼女はそれに対して、You know what I mean.と答えている。
直訳すれば「あなたは私の言った意味を分かっている」という事だ。

つまり銃の引き金を引いておいて「撃てなかった」というのは、
「あなたの望むような『誇りある死』を与えられなかった」と言っている。
そう言う意味である事を、あなたは知っているでしょう、という訳だ。

そして「撃てなかった」のは愛していたからであるから、 I can't shoot you.
というのは「愛している」と言ったのと同じ意味な訳である。

彼がそれを理解してYou shot me. と言ったとすれば、
「撃ったじゃないか。君は自分の仕事をよくやった。」というよりも、
「君は俺のハートを射抜いた、だから俺はこういう行動をとった。俺は死ねなかったが満足だ。」
とでもなるだろうか。

ラスト数秒の短いやり取りでもこれだけの味わいがあるのである。

SIG 230p(またはシグ380)という銃に関しては、また日を改めて書きたい。











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